どの特化データを蓄積し、
どのハーネスで汎用LLMを制御したか
「AIを作るな。ハーネスとドメイン特化データを作れ。」——この思想を実装した各プロジェクトの解剖です。 モデルを弄る代わりに、何をデータとして積み、何を外側の制御として組んだかを公開します。
ドメイン特化データ(高品質データ資産)
RAGの燃料となり、必要なときにはFTの種となる、自前のクリーンな一次情報。巨大モデルを自前学習しなくても、このデータがあるから汎用LLMが特化型知性へ変貌する。
strata
arXiv 15.7万本のLaTeX・数式抽出データレイク
蓄積した特化データ
どのドメイン特化データを、どう蓄積したか
論文PDF/ソースからノイズとなる数式重複を剥がし、LaTeXアノテーションを抽出。DuckDBとParquetの単一ファイルレイクに冪等に積む。PostgreSQLクラスタもAPI層も置かない——正しい特化データを積む単一責務に絞り、分析側は直接参照する。
finance
SEC EDGAR / EDINET 法定開示データ基盤
蓄積した特化データ
どのドメイン特化データを、どう蓄積したか
米国SEC EDGAR、日本EDINET、J-Quantsの法定開示から正規化した財務数値を蓄積。泥臭いクレンジングと正規化を経た一次情報資産であるからこそ、金融知識のない個人でもDCF本質的価値計算パイプラインを正確に回せる。
ハーネス設計(制御・実行システム資産)
巨人の暴れ馬を手綱で縛る外側の設計。生成・通信・開発の3領域で、暴走とハルシネーションを物理的に防ぎ、目的を完走させる。
Story_creator
創作・長編自律執筆ハーネス
制御設計
汎用LLMの暴走を、どう物理的に防いだか
事前学習とFTを断念した末に到達した、長編小説自律執筆の制御機構。生成プロセスと監査ゲートの責務を分離し、設定図・辞書マスターとの照合を多層的に検証・トリアージする決定論的監査アーキテクチャにより、長編全体の世界観と伏線を破綻させずに完走させる。
resilient-llm
ゼロインフラ通信ハーネス
制御設計
夜間バッチを落とさない通信防壁を、どう薄く作ったか
外部Redisやプロキシを排し、単一プロセス内で429レート制限・複数キースロット・TTFTを監視する耐障害性レイヤー。LiteLLMとInstructorの肩に乗り、自己学習型台帳(RateLimitLedger)と5xx隔離の薄いインメモリ層のみを提供する。どのモデルに差し替えてもバッチは落ちない。
CLI_Subagents
開発・実行ハーネス
制御設計
異種AI CLIを、どう安全に並行実行させるか
Claude CodeからKiroやOpenCodeを安全に従属・並行実行させる。重いコンテナやtmux(Linux依存)を排し、標準git worktreeとファイルベース状態管理で完結。OpenCode非対話ハング回避、Kiro予算残量遮断、.git指紋照合によるサプライチェーン改ざん検知に集中する。
LogicHive
決定論的ガードレールエンジン
制御設計
確率的出力を、どう決定論的に保証するか
LLMのハルシネーションを「もっと上手くプロンプトを書く」で防ごうとせず、厳密なビジネスルール・バリデーション・状態遷移を決定論的に保証する外側のエンジンとして切り出す。生成と検証の責務分離の典型。
ディファクトOSSの上に、薄い独自層だけを積む
思想を裏付けるのは「目利き」です。世間が足し算で暴走しがちな領域でも、ディファクトスタンダード(MIT / Apache-2.0)に乗り、独自のハーネス&データ設計だけを提供する。
| 領域 | 採用OSS | 独自の薄い層 |
|---|---|---|
| 異種CLI並行開発 | mcp (python-sdk) / awslabs cli-agent-orchestrator / psutil / loguru | git worktree + ファイル状態管理。ハング回避・予算遮断・指紋照合 |
| LLM耐障害性・通信 | LiteLLM / Instructor / Pydantic | 429自己学習台帳・キースロット回転・TTFT監視(Redis不要) |
| 特化データ蓄積 | DuckDB / Apache Parquet / BeautifulSoup4 | 正しいデータを冪等に積む単一責務。PGクラスタもAPI層も置かない |
| 出力整合性・品質監査 | Python標準ライブラリ / IPA辞書データ | 生成と監査ゲートの責務分離・決定論的多層トリアージ |
設計判断の「Why Not」まで読む
何を作ったかではなく、何を捨てたか。ADR(Architecture Decision Records)には、実際の開発で直面した問題と代替案を棄却した理由が記録されています。