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教科書には載っていない「なぜAIは微分を必要とするのか?」:AIエンジニアのための数学「第0章」

Published on "01/01/2026 21:00:00" by Ayato

教科書には載っていない 「なぜAIは微分を必要とするのか?」

計算ドリルを始める前に知っておくべき、AIエンジニアのための数学「第0章」

AIエンジニアを目指して勉強を始めると、必ず「微分」という壁にぶつかります。

微分の「解き方」を解説した教科書は山ほどありますが、「そもそも、なぜAIは微分を必要としているのか?」について、納得いくまで解説してくれているテキストはほとんどありません。

「公式は覚えた。でも、それがAIの学習において具体的に何をしているのかイメージできない

この記事は、そんなモヤモヤを抱えるエンジニアのために書きました。数式を一旦脇に置き、AIにおける微分の「正体」を定義します。

1. AIの学習とは「目隠しでロボットを操縦すること」

まず、イメージを統一しましょう。「山」と「ツマミ」の関係は、以下のように考えるとスッキリ理解できます。

🤖 🎛️ 🏔️ 【状況設定】
あなたは目隠しをして、コックピットに座っています。
遠く離れたデコボコの山脈(誤差の山)に、1台のロボットがいます。
あなたの目的は、ロボットを「山の谷底(正解)」に着陸させることです。

あなたにはロボットの姿が見えません。手元にあるのは、ロボットを動かすための「数億個のツマミ(パラメータ)」だけです。

ここで、唯一頼りになる計器が「微分」です。

2. 微分の役割:計器が教える「傾き」と「距離」

微分とは、数学的には「ある地点における傾き」のことです。これをコックピットの計器に例えると、次のようになります。

① ツマミを回す「方向」を教える(羅針盤)

計器(微分)はこう教えてくれます。
「いま、このツマミを右に少し回すと、ロボットの足元は下がりますよ(傾きがマイナス)」
これを聞けば、あなたは迷わずツマミを右に回せます。数億個あるツマミのすべてに対して、「どっちに回せば下がるか」を同時に計算するのが微分の仕事です。

② ツマミを回す「量」を教える(アクセル)

さらに、計器(微分)は「傾きの急さ」も教えてくれます。

⚠️ 上級者への第一歩:「ニセモノの谷底」に注意

微分はあくまで「今の足元の傾き」しか教えてくれません。そのため、本当の谷底(Global Minima)ではないのに、たまたま平らになっている場所(局所解や鞍点)に来ると、計器が「傾きゼロ(到着!)」と誤判定してしまい、ロボットが動けなくなることがあります。

現代のAI(Adam等の最適化手法)は、こうした罠を回避するために、「勢い(モーメンタム)」をつけて小さな窪みを飛び越えるなどの工夫をしています。

3. 計算はライブラリに任せ、人間は「監視」する

この複雑な「傾きの計算」と「ツマミの調整」の連鎖を、専門用語で「バックプロパゲーション(誤差逆伝播法)」と呼びます。

現代の開発では、この計算を人間が手で行う必要はありません。PyTorchなどのライブラリが自動(autograd)でやってくれます。しかし、「計算できること」と「意味がわかること」は別です。

概念さえ分かっていれば、実務でトラブルが起きても原因を推測できます。

4. 次のステップ:そして「線形代数」との合流へ

微分の役割が「操縦のための計器」だと分かったなら、次は「線形代数(行列)」へ進みましょう。

AIは「1つのツマミ」ではなく「数億個のツマミ」を同時に操作します。線形代数は、この大量のデータを管理するだけでなく、「空間そのものをグニャリと歪めて、谷底を見つけやすい形に変形する」ための強力な武器です。

「微分(操縦)」と「線形代数(空間の変形)」が出会ったとき、初めてディープラーニングの全貌が見えてきます。さあ、次は行列の世界へ飛び込みましょう!